今月の川柳解説

 「愛のある暮らしに愛の息詰まる」

 「紫は赤と青だと思ってる」

 

 

 「愛のある暮らしに愛の息詰まる」・・・暮らしに、「愛」などという形容を付けられると面喰らってしまう。昔、「大草原の小さな家」というNHKのドラマがあった。毎週楽しみに見ていた。ある回、その家の長である父が、畑を耕している妻に「きみと結婚してひとつだけ後悔していることがある。」と言う。妻は、手を止め「あら、なにかしら?」(日色ともゑの声である。)「きみにもう一度プロポーズできないことさ。」私は少しのけぞったと思う。西洋のドラマであるなと思う。山田太一のドラマでは、父はどうしようもない父として現れる。ぐうたらで、理不尽で。向田邦子ドラマもそうだった。家族は反発しながらも受け入れる。最近では、スマップの草薙君のCM。白いシャツに頬づりしながら「きみが毎日洗濯をしてくれているから、僕のシャツはこんなに白かったんだ。」だったかな。洗濯洗剤のコマーシャル。後姿の妻が写る。「愛」のある暮らしを強調されると、やっぱり困ってしまう。大草原でも、草薙君がパパても私はぐれてしまうだろう。「絵に描いた餅」に大好きな餡子は入っていない。

「紫は赤と青だと思ってる」・・・紫は、赤と青を混ぜて作る。他に、緑は黄と青だ。人の目に「紫」「緑」と見えようと、実体は単色の混ざりである。紫は緑はあきらめる。そして、自分の単色「赤」「青」「黄」を見極める方向に行く。それが、川柳ではないかと思う。

 

では、又、次回ですね。

2009・11・28    山口亜都子